重要な決定をする際に毎回、完全な情報、予測可能な結果、そして明確な答えが伴っていれば、リーダーシップを発揮するのはかなり容易になるでしょう。もちろん、ビジネスの実情はそうではないことがほとんどです。リーダーたちは、テクノロジーが変化し、顧客の期待が移り変わり、経済、規制、地政学的な状況が絶えず変化し続ける中で、意思決定を行わなければなりません。そのような状況では、すべての質問に答えが出るまで待つことが、責任ある行動のように感じられます。実際にそうである場合もあります。しかし、時には待つことが、前進することよりも大きなリスクを招く場合があります。 

リーダーにとって重要なのは、不確実性を排除することではありません。重要なのは、行動を起こすのに十分な知識が身についたと見極める判断力を養い、他者に対して、同じように行動できる自信を与えられることです。これには、次の4つの原則が役立ちます。 

 

1.「確実性には代償が伴う」ということを認識する 

優れたリーダーは、事実を求めなければなりません。人材や時間、リソースを投入する前に、リスクを精査し、前提条件を疑い、難しい質問を投げかけるべきです。しかし、追加の分析によって意思決定の質は向上せず、むしろ決断を遅らせてしまう局面があります。 

この違いを見極めることが重要なのは、私たちが分析している間も、世界は止まってはくれないからです。テクノロジーのサイクルはますます加速し続け、顧客も選択を続けています。市場の状況は急速に変化することがあります。したがって、確実性が得られるまで待つことは、中立的な立場とは言えません。それ自体がひとつの決断であり、多大な代償を伴う可能性もあります。  

これは、単に速さを追求して行動を急ぐことを意味するわけではありません。つまり、責任あるリーダーシップを発揮するには、理想として手元に集めたい量よりも少ない情報に基づいて行動しなければならないことを受け入れる必要がある、ということです。大切なのは、完全な確信を得ることではありません。新たな事実が明らかになった際には柔軟に対応できるよう備えつつ、慎重に前進できるだけの確信があれば十分なのです。 

 

2.何が最も重要かを知る 

情報が不完全な場合、最も重要なリーダーシップスキルの一つは、興味深い情報と重要な情報を区別することです。 

収集すべきデータや、モデル化すべきシナリオは、ほぼ常にどこかに存在します。問題は、その追加情報が意思決定を実質的に変える可能性があるかどうかです。 

私は、次の4つの質問に焦点を当てることが役立つと感じています。どのようなことを、高い確信をもって把握できているか?どのような前提に基づいているか?それらの仮定が間違っていたら、どうなるのか?そして、さらに確信が持てるようになるまで待つことのビジネス上のコストはどれくらいか?  

最後の質問には特に注意を払う必要があります。組織は、行動を起こすことによるリスクを精査することには非常に長けている傾向があります。私たちは、何もしないことによるリスクを評価することに関しては、往々にして慎重さを欠いてしまいがちです。 

何が最も重要かを理解することで、リーダーは不確実性を絞り込むことができます。すべてを把握できていなくても、結果に最も影響を与えそうな要因を理解していれば、理にかなった判断を下すことができます。 

 

3.判断を下すタイミングを見極める 

ある時点において、分析を行動に変える必要があります。 

特にその判断による影響が大きい場合、これは容易なことではありません。リーダーは当然、最善の決断を下したいと願っており、さらなる情報を求めることは、念入りに物事を進めているように映ることもあります。しかし、分析を重ねたからといって、必ずしもより良い答えが得られるとは限りません。 

追加情報を得られたとしても、その決定が実質的に変わる可能性は低いという段階が訪れます。その段階に達したら、決断を下してください。 

無謀になったり、衝動的に行動するのではなく、入手可能な情報に基づいて、可能な限り最善の決断を下す責任を受け入れるということです。先延ばしにしたからといって、必ずしもリスクが軽減されるわけではありません。顧客や競合他社、テクノロジー、組織の他の部門が絶えず変化し続ける中で、単にある種のリスクを別のリスクに置き換えているだけということもあります。  

従業員にも進むべき方向が必要です。たとえ難しい決断であっても、明確な方針があれば、人はそれに基づいて行動を起こすことができます。決断力があるとは、不確実性が存在しないかのように振る舞うことではありません。不確実性にもかかわらず、責任を持って行動することなのです。 

 

4.ボトルネックにならないように 

意思決定においておそらく最も重要な点は、それが経営陣だけのものではないと認識することです。 

難しい判断や不確実な決断のすべてを上層部にエスカレーションし続けてしまうと、組織の動きが鈍くなります。経営陣は慎重になり、従業員は、自ら判断を下すのではなく、承認を求めるようになります。結局のところ、リーダー自身がボトルネックとなってしまうのです。 

エンパワーメントとは、単に「自分で決断しなさい」と伝えるだけでは不十分です。リーダーは判断の枠組みを示す必要があります。各チームは、重要視すべき成果、管理が求められるリスク、自分たちのチームが責任を持つ意思決定、そしてエスカレーションが真に必要となるタイミングを把握しておかなければなりません。その上で、リーダーはチームを信頼する必要があります。  

その信頼こそが重要なのです。人によっては、自分たちなら下さなかったであろう判断をすることがあります。判断の基準は、すべての決定が完璧だったかどうかではありません。重要なのは、人々がその目的を理解し、関連情報を検討し、リスクを考慮した上で、健全な判断を下したかどうかです。 

 

結局のところ、不確実な時代におけるリーダーシップとは、常に答えを持っていることではありません。答えが明らかではない状況でも、前進できる組織を作り上げることが重要なのです。そのためには、どの情報が重要かを見極める規律、十分な情報が得られたら行動を起こす勇気、そして他者が責任ある判断を下せると信頼することが必要です。私たちが下すすべての決断が、常に正しいとは限りません。それはどの組織でも同じことです。しかし、人々が何が重要かを理解し、自分の責任範囲を把握し、自分の判断を信頼されていると感じられるようになれば、不確実性は組織の前進を妨げるものではなく、組織が共に乗り越えていけるものとなります。 

Jeffrey Hartは、Seagull Software社の最高経営責任者です。収益性、革新性、成長を促進する価値の高い戦略を立案・実行し、売上と利益の両面で数千万ドルの成果を生み出してきました。戦略的ビジョンと強力なリーダーシップの融合で知られ、エンゲージメントの高いチームを構築し、ビジネスを市場リーダーへと成長させた実績があります。